ありきたりなものでも、究めればイノベーションになるのだ!
イギリスの産業革命以降、列強と呼ばれる国々が工業化に力を入れて発達していきました。
ご存じのとおりイギリスに続いてベルギーやフランス、アメリカ、ドイツ、ロシア、日本といった具合です。
今でもドイツや日本の工業製品などは高品質で世界に認められていますが、それらの国以外で各国の工業化に貢献したかもしれない意外な国があります。
日本より少し大きい面積を持つスウェーデンです。
イメージわきませんよね。
スウェーデンっていうとどうしてもIKEAを連想しますが実はこの国、発明の国でもあるようです。しかも僕らが生活で欠かせないものを数多く発明しているんです。
たとえば、温度計の単位を発明したのはアンデルス・セルシウスというスウェーデンの天文学者で、日本語の「摂氏」というのはこの“セルシウス”からきています。
ほかにもファスナーの原型やダイナマイトを発明したのもスウェーデン人です。
2000年、このイノベーションあふれる国のある企業の日本工場が、日本企業の工場の例にもれず閉鎖の危機にありました。
その企業の名はサンドビック・コロマントCo.というスウェーデンに本社をもつ世界有数の切削工具メーカーです。
日本工場の閉鎖は既に決まっており、それを粛々と進めつつ日本マーケットのインフラ構築をするべく副社長兼事業部長に藤井裕幸氏は就任しました。
ところが閉鎖どころか、世界中にある同社の中心的な支所になります。それもイノベーティブな方法で…。
経営者に、また製造業で頑張る人たちに是非読んでほしい本があります。
藤井裕幸著『究める力 〜 5Sでも、究めればイノベーションになる』です。
※ 5Sとは「整理、整頓、清掃、清潔、躾」という製造業における基本的な業務改善活動のこと
『三流は環境を嘆き、二流は順応し、一流は変革する』
この本を読んで感じた著者の注目すべき点は、昔気質な考え方とイノベイティブな感覚が同居している点だと思います。
グローバルに活躍されてきた方だからこそ、案外そういう人は謙虚さに欠けたりプライドのせいで頑なだったりしそうですが(あくまで恣意的イメージ。すみません)そういった感じもなく、ものすごく柔軟で紳士的なところに感服しました。また『言志四緑』という書物の話も出てきますが、博識で自分を客観的に見つめなおせるところなど、まさにリーダー然としたところが男として、経営者としてカッコ良いんですね。
僕は経営経験はありませんが、経営者がよくやる人員を削減というのは顧客へのサービス提供を犠牲にすることだと考えます。身近なところでいえばファミレスです。コスト削減のために行き過ぎた人員削減でお客様へのサービスの質が低下、結果ブランド価値を下げてしまい価格競争に陥いりました。(ブランド構築にも関係する話なので詳細は別の機会に)
工場レベルの指標に「QCD(Quality、Cost、Delivery)」というものがあり、著者はそこに「S(Service)」を加えて顧客へのサービスの質を向上させています。あえて人を切らずリードタイムを短縮して顧客満足度の向上を図る。一見当り前ですけどできない経営者の方は多いのではないでしょうか。(何度も言いますが僕は経営ど素人ですがエラそうですみません)
経営者でよく「どうしたらできるかを考えろ」という人がいます。しかしこの物言いはある意味会社外からの言葉だと思います。まずリーダーとして「どうしたらできる考えを持たせられるか」ということを従業員と共に内部的に考えなければ、それは単なる「経営者のボヤキ」を自分の社員にさらすという恥ずべき行為です。(しつこいですけど、僕は経営経験ありませんww)
その点について藤井氏は言います。
経営者が改革のロジックを理解して納得していないのに「とにかく変革しなくては」、「お前らも何か考えてくれ」とハッパをかけても下から上には動きません。何をどうやればいいのか、最終的に何がどうなるのか見えないのに「何かやろう」と言うことが、そもそもおかしいということです。
イノベイティブなコスト管理
イノベーションはなにも、これまでこの世になかったものを創造する事じゃありません。
むしろそういうものは現代にはほとんどありません。
『成功はすべてコンセプトから始まる』https://www.amazon.co.jp/gp/product/4478021570/ref=as_li_qf_sp_asin_il_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4478021570&linkCode=as2&tag=soulsurfer0f-22という本の著者、木谷哲夫氏は著書の中で「創造性は、後天的に獲得できるスキル」だと言っています。つまり「蓄積された知識や経験、記憶の断片、何か心に引っ掛かったものを、独自の視点でつなぎ合わせること」なのだと。
たいていのことが創造しつくされてきている現代において、むしろ完全に新しいものをイノベイティブに創り出すなんてことは難しいわけで、時間の無駄です。
特筆すべきことに、製造工場なので普通なら油にまみれたりする場所であるにもかかわらず、「三越よりもきれいな床にしよう」と「5S」活動の一環として掲げて実践しています。そこから従業員一人一人に「儲かる5S」の感情が芽生えていくのですが、そのプロセスは是非本書を読んでください。
藤井氏が取り組んだ方法は従来からある「5S」などの考え方を徹底的するため、上記のような革新的方法で実行していきます。ネタバレになるのでここからは本読んでください。素晴らしい気づきがあります。
経営者でなくても、どんな仕事でもプロとしての自覚を持つことが大切だと思います。
情熱がなければ生きてても面白くもないし、生涯の多くの時間を仕事に費やすわけですからそこに熱い思いを注ぎ込むって、なんかかっこいいじゃないですかww
経営者が聞いておくべき藤井氏語録
本文より〜
もう、日本の製造業の役割はマスをチャンスにする時代は終わった 〜中略〜 その場所で復活しようとしてもアジア新興国の勢いには勝てないでしょう。〜中略〜 時代は変わったのです。逆に、成熟した日本だからこそ、細かな技術やマーケティングでニッチで負けないものづくりをすることはできるはずです。
(経営側と社員との間の不信感から会社が停滞する)状況に陥っている要因の一つは、リーダーのマネジメントの問題だと思います。仕事の面白さというものを現場に教えていない。〜中略〜 世界と競争して世界に勝つというのは、何も大それたことをしなくてもできる
(従業員へ)単なる給料と引き換えにするだけのような、自分の人生の時間をお金に変えて売るようなことは絶対にしては駄目だ
経営者の幹部の中に「私はよく現場に行っています」ということを言う人がいますが、現場に行く回数が大事なのではないのです。現場に自ら足を運んで何を発見して、それをどう経営に生かしたのか。現場の課題をどのように経営課題として捉えて解決したかが重要です。
これまでの「決断」は〜打ち上げたらおしまいというもの。〜中略〜 これからの時代に必要な決断は「目標追従型」〜中略〜 適宜、目標に向かって進路をとっていくような決断
この決断をするためには「知識・見識・胆識」を蓄えることも経営者やリーダーには必要
(成果主義で職場の混乱が起きて)あれは、そもそも一般社員に短期的な結果を求めたからです。本来、成果主義で評価すべきは管理職です。一般社員がいろいろなチャレンジをして経験を積んで、それによって全体が成長していく。そうした成果を出せていない管理職と言うのは、自分の役割を果たしていない
究めるという言葉は「極める」とはまた違って限界がありません。
皆さん、頑張っていきましょう!!
いつも読んでくれてありがとね!