レストランのサービスについて考えた。〜ブランド力とサービスの関係〜
webでマーケティングや広報を担当しているからには新しいものは見とかないとマズイでしょって事で、激混みを承知で泣く泣く幕張にできた巨大(すぎる)『イオンモール幕張』に行ってきました。
はっきり言ってデカすぎてどこが良いとも言えないんですが、ある出来事がありました。
腹が減ったので入ったレストランで、久々に良いサービスというか、心遣いに感心しました。
『もてなし』のための言葉というツール
そのお店はチェーン店の『牛たん炭焼 利久』です。
店員が適切に人員配置されているとは言え、コップの水の量を見て何度も来てくれたり、子供の髪型を褒めてくれたり、さり気ない“もてなし”をチェーン展開のレストランで受けられたことに感動しました。社内教育というよりもその店員さん自身のキャラクターだとも思うのですが、『株式会社利久』さんへの好印象レベルは格段に上がります。
普段ファミレスに行っても店員とのやり取りというのはオーダーとその確認というくらいだと思います。それが普通だし、それで違和感もないです。よほど隣近所の常連じゃない限りやたらめったら話しかけると『うぜぇ客だ』『馴れ馴れしい』と思われるのがオチです。
でもたったひと言、たったワンアクションだけの気転と言うか気遣いがあれば他のお店と“差別化”できて人気を得られる事を最近のファミレスなどは忘れてしまっている気がします。
古き良き時代のファミレス
僕が子供の頃、ファミレスにはまだちょっとした高級感がありました。特に田舎育ちの僕は、東京の親戚の家に遊びにいった時くらいしか行けないので、きまってサーロインステーキを頬張ったもんです。自分で言うのもなんですがかわいかったww。
そしてそこで働くウェイトレスさん達を子供心に“いい仕事すんな、カッコいいな”と感動すらしたもんです。
子供がいれば子供用のいすを何も言わずに持ってきてくれる。忙しくてもホール全体を見回していて手を挙げればすぐ気づいてくれる・・・
そこには確かに、お客をもてなす『サービス』があったと記憶しています。
時代は流れ、昨今のファミレスは原材料費や人件費の高騰で経営が厳しいという話を良く耳にします。
しかし、本当に『原材料費や人件費』だけの問題でしょうか。
ファミレスのサービス放棄=ブランド力の劣化
今ではすっかりおなじみとなった『ドリンクバー』導入以後、ファミレスのサービス劣化は始まったと僕は思います。
当初このシステムは店員の各テーブルへのドリンク提供を簡略化できるため、店員の数を減らすことができる。それが低価格を実現できるとして始まりました。けれどいつのまにか価格設定は導入前に近づいている気がします。
某ファミレス大手は複数タイプの店舗をすみわけし、従来のサービス提供をする代わりに従来通りの価格設定でサービス提供・運営する店舗と、低価格設定でドリンクバーを導入する店舗に分けました。しかし、気づけばいつの間にやら全店に導入されているのに価格はほぼ据え置きです。
ドリンクバーのシステムは悪くないです。むしろ低価格で食事が受けられれば悪いことは無いです。
低価格を追求した店舗は大いに結構だと思います。
が、そのシステムに慣れてしまったほとんどのファミレスは、すっかり“もてなし”というサービスを放棄してしまった気がします。
前述した昔のサービスがあった時代はファミレスにブランド力がありました。
その“もてなし”や“サービス”を放棄したことで、もはやブランド性など無いわけです。
ブランド力が低下すると価格競争に引きずりこまれます。なぜなら価格もサービスもその質が横並びになり、競う場所が価格しかないからです。
ブランドの定義は長くなるので別の機会にしますが、有名だからブランド力があるわけではありません。
ブランドとは、消費者側がある商品や会社名などを見た時に連想する“焼印”です。消費者が何か買ったり食べようとしたとき、心の中で対象となる企業やお店を想起させる物です。その力が強いほど魅力的で価格以外の競争にも勝てるようになるわけです。
安いレストランでは仕方ないとは思いますが、あの「呼び出しボタン」が僕はどうしても好きになれません。
店員さんが目の前にいるのに、なにかシステマティックで人間同士のかかわり合いを極力減らされている気がします。
もちろん人件費の問題で昔より従業員を減らしていて、その対応策として呼び出しボタンあんだろってのはわかります。でもそれはサービスと言う観点から見ても店側の都合(問題)でしかなく、お客側に理解を求める事柄ではありません。
時代が変わったんだと言われればそれまでですが、人を「喜ばせる」「もてなす」という行為は時代が変わっても存在し続けます。
人間が受ける印象や嬉しさは、たとえ時代が変わったとしても、そう新しくない方法でもてなしを受ければ昔と同じはずです。