ホワイトスペース戦略~ビジネスモデルの〈空白〉をねらえ マーク・ジョンソン(著)
この本、経営者は必読じゃないでしょうか。どちらかというとある程度大きな会社でコンシューマ向けのビジネス企業向けの内容ですけど、読み物として読んでも参考になる部分はかなりあります。
企業ビジネスが停滞した時に踏み出す場所はどこで、どのタイミングで、どんな方法があるのかが本書にあります。
ぼくは大学で経済学を学んでいないので市場での商品やサービスがコモディティ化するプロセスなどは知らなかったので、そういったあたりも勉強になりました(なったのか?ww)
ホワイトスペースとは?
ホワイトスペースとはつまり、自社のビジネスモデル以外の対象領域のことを指している。
本書の中で既存の中核領域はコアスペース、ビジネスモデルを応用しスライドできる領域を隣接スペースと定義している。
この本の良いところ
この本のいいところはこの手のビジネス本とちがい、単なる対策の羅列じゃなくて、自分の企業がどんなビジネスタイプでどういう状況の時にどのタイプのホワイトスペース(ビジネスモデル)を狙うべきか、そしてそれを実践成功した企業を例に挙げてどう取り組んだかを紹介してくれている。
顧客価値提案を含む3つのキモ
まったく未知のビジネスモデル領域へ踏み出すためにはまず自社の4つのキモ(本書中では「四つの箱」と言う)を検討すべしとある。
すべてはそこからビジネスモデル・イノベーションが始まる。
1.顧客価値提案
2.利益方程式
3.主要経営資源
4.主要業務プロセス
すると今ある自社のビジネスの要素が理解できる。
ホワイトスペースに乗り出す際もこれが重要ですよ、それが明確になるなら成功の可能性がありますね、ってこととその注意点などがしめされてます。
本書の言葉を借りれば巷間よく言われているように、“繁栄している企業はみな、強力な顧客価値提案を原動力にビジネスを行なっている”ようです。
ありがたい格言的提言ww
格言ぽい記述もあって、なるほど!とうなります(たぶん…)
- 新事業を立ち上げようとする企業のほとんどが失敗するのは、正解だと立証できていない行動を取ることを恐れるからだ。
- 顧客がどのような商品を書いたがるかを推測するのではなく、ある環境で顧客がどのようなジョブを成し遂げたいと思っているかを考えるべきだ。
- 顧客価値提案を誰にでもわかるように簡潔に表現できないときは、その内容が十分に明確になっていないか、絞り込みが十分でないかのいずれかだ。
- 利益方程式をビジネスモデルと同義に考える人は多い。企業にとって最終的に重要なのは利益を生み出すことなので、そういう発想になるのだろう。しかし、利益方程式はあくまでもビジネスを構成する一要素に過ぎない。そのことを忘れてはならない。
- 新しい市場を切り開き、新しい顧客のジョブを解決する最初のステップは、ジョブの解決をさまたげている要因、言い換えれば非消費者が消費者になることをさまたげている障壁を特定することだ。その障壁を打ち破る顧客価値提案を掲げて、自社の商品やサービスを「民主化」できれば、新しい市場を手にできる。
- 私たちはどうしても、「内からの視点」で市場を見ようとする。自社の既存のビジネスと既存の商品・サービスを基準にものを考える傾向があるのだ。〈中略〉忘れてはならない。探すべきなのは、顧客の未解決のジョブだ。
- 新しいビジネスモデルを築いて変革のチャンスを生かすためには、現状において既存のビジネスモデルのさまざまな要素がどのように機能しているかを理解しなくてはならない。
- 現実の企業は、それぞれ独自のビジネスモデルをもつ複数の部署で構成される場合が多い。私の経験上、企業の一つの部署が複数のビジネスモデルで成功を収めることは不可能に近い。〈中略〉新しいビジネスモデルと新しい部署をつくり出し、運営し、閉鎖するプロセスを繰り返すことが不可欠だ。
- 適切なシステムを構築しなければ、戦略を有効に実践できない〈中略〉企業は、コアスペースの既存事業を斬新的に成長させることを目標に(毎年同様の戦略で取り組むが、コアスペースに基ずくかぎりその能力の)範囲内の戦略しか考案されない。〈中略〉根本的な過ちをおかしている。
- 変革を実践するためには、顧客に価値を提供することすべてに優先させて考える勇気が必要だ。
ホワイトスペース戦略の機会と時期
ホワイトスペースに乗り出すチャンス、あるいはそうせざるを得ないタイミングとは、顧客価値提案で顧客のジョブが解決されていない場合であるとしている。
また「私たちはどうしても「内からの視点」で市場を見ようとする。」とも言い、自社既存のビジネス・商品・サービスを基準にものを考える傾向があると忠告している。
重要なのはあくまで顧客の未解決ジョブだって事なんすね。既存顧客は一人もいない前提で考えるべきだと。
ホワイトスペース戦略の実例
様々なホワイトスペース戦略の場面を多くの企業事例で紹介している。
例えば、
・コモディティ化した低価格市場で、高い利益率で生き延びてきた企業ダウ・コーニング社がどう転換を図ったか。
・コモディティ化を利用したヒルティ社
・上のタタやホールフーズ社の例
・電動工具のヒルティ社は低価格競争から脱して「高価格帯市場向けサービス」への転換を果たした
・政治的、民族的問題を乗り越えたヒンドゥスタン・ユニリーバ社
またホワイトスペース戦略に乗り出せなかった失敗のファクターを例として、パロアルト研究所を傘下に配しながら、そのテクノロジーを生かせなかったゼロックス社を挙げて説明している。
顧客が望む価値を発見する
企業がよくやる顧客ニーズに基ずく市場分析は(最近はマッキンゼー本なんかの影響か、あまりみかけなくなったが)「あなたはウチの商品に何を求めますか」的な一見顧客に親切な雰囲気を演出する方法も「幻想の市場セグメント」をつくり出すだけて意味はないといっている。
正しくは「どんな課題を処理したいですか」だと。
顧客の未解決ジョブを解決する
本書では一貫して「顧客の未解決ジョブを解決する」ことの重要性を語っている。
顧客価値提案ではあるジョブが未解決なことへの対応が必要で、例として僕も当時衝撃的に感じたタタ・モータースの10万ルピー自動車(2000米ドル)や付加価値商品で富裕層顧客を増やす事に成功したホール・フーズを挙げている。
また、顧客未解決のジョブ発見のための方法についても様々な方向から語られてます。
最後にw
インドって、世界の『総毛髪量』に占める割合は28%なんだってw