腑におとす文書の作り方~ロジカル・ライティング 清水 久三子 (著)
忙しい人ほど朝からメールチェックで情報の洪水にのみこまれるので、そんな人に論理性の欠如した文書を読ませるのは酷です。
わかっていてもそうした論理的な文書を書けない人はぼくも含めたくさんいると思います。
そんな時この本を読むとちょっとはマシなドキュメントが作れるようになるし、日々の訓練次第で“メッセージやストーリーが筋道立っていて、構成が構造的である文書”が書けるようになると思います。
本書は文書タイプを4つに分けて提示してくれます。
- 情報を共有する
- 情報を報告する
- 依頼する
- 提案する
ロジカルな文書の必要性
冒頭『毎日数百通のメールを受け取る上司にどう伝えるか』で、忙しい人に見てもらうドキュメントはロジカルに作られていれば理解する時間も短縮され、文書について質問などの余分なやり取りはなくなり自分自身も仕事がスムーズに進むと言っています。
新書なのでサクッと読めるし、企画書作るときは永田豊志著『頭がよくなる「図解思考」の技術』と『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』を併せて読むといいものが書ける!…気がしますww。
PCで書類を作る、その前に
文書を作るうえではよく言われているように、いきなりPCに向かってパワポを開いても当然いい文書は作れません。
ぼくの上司はいつもすごい提案書をつくっていて感服させられるんですけど、そういう人はたいていPC作業をする前の段階でものすごい速さでロジカルな手書きのラフドキュメントをパパッと作ることができる人です。けれどそこまで至るには別の能力が必要ですが、ある程度この本の内容を理解して訓練していけばそこそこいいものは作れると思います。
日本の慣習なのか、ページ数が多いことが仕事の成果とイコールととらえる人がいるので社内報告書などは特にそういうものがみられる気がします。
この本では、“文書作成力を高めるために<中略>「どう伝えるか」ではなく「何を伝えるか」を考え”る方法が提示されています。
「わかる」ということの意味
文を読んでたいていの人は2つの「わかる」という対応をしています。
- 書いてあることの意味が分かる
- 意味を理解し、その意義を理解する
“2”はいわゆる腑に落ちた状態で、ここに至らない限り読み手は何も判断を下せず、何の行動も起こせません。
腑におとすためには、まず「主張と根拠」から始まる文書設計をして、筋道だった構成で構造的な文書を作る必要があるわけですね。
ドキュメント設計
PCでの前段階では文書の骨組み設計が必要なわけですけど、読み手を腑におとして行動してもらうためには、その目的設定が重要です。
本の中では3つの目的設定を提示しています。
- どんな行動をとってもらいたいか(最終目標)
- 何を理解してもらいたいか
- (読み手の気持ちなどの状態を)どのような状態にするべきか
そうしたことを考えるうえで必要な技術や考え方、たとえば訴求相手を理解するための「プロファイリング」や読み手の想定範囲外の情報や切り口を含める方法も紹介されています。
・依頼文書で相手が何を訴求されたら動くかのポイント
- 価値の訴求
- 社会性の訴求
- 承認の訴求
- 一貫性の訴求
これらは社内文書だけでなく、外部に対してのたとえば企画書・提案書などにも有効でしょう。
文書全体の構成方法
メッセージは「主張」と「根拠」からなり、基本的には「帰納法」と「演繹法」…大学の哲学をまじめに受けてないと自信ないコトバですけど、本書では簡単に説明されているので安心。また、ロジックエラーの防ぎ方をマッキンゼーのバーバラ・ミント氏のピラミッド構造を用いてます。
議事録の作り方とスタンス
著者の経験上、いい年こいても議事録すらまともに録れないひとが多いらしく、そこらへんもものすごくしっかり書かれています。
「議事録を制する者は会議を制する」と言われるのは、記録マシンのような受け身の姿勢ではなく、自ら会議の流れに関与していくことが必要だからです。
議事録をつくるうえで心がけることはコスト意識と責任感だそうです。
出席者全員の給与コストが含まれる会議ゆえ、その会議内容がのちに小さなミーティングなどで話題に上ったときなどに議事録を見れば回想できる内容でなければならないし、それだけ重要なものをつくっているという意識は重要だということですね。
議事録を録るうえでも筋道立てて構成するためには4点に注意しながらまとめるといいそうです。
- 1. 議題に対して
- 2. どう議論が展開されたかという流れ
- 3. 議題に対する結論
- 4. 結論に対して了解が得られたかどうか
依頼文書の「おもてなしの心」
人から依頼される文書で、あまりにも“ビジネス上の文書なんだからそんなに丁寧じゃないけど、まぁいっしょ?”的なものだと気分的になんだか読む気も失せてくるし、ましてや行動しようなんて。少なくともぼくは気分が乗らなくなります。
その点についておもしろい記述があります。
依頼文書をつくるとき「仕事上のやり取りでサービス精神はいらないだろうと思うかもしれませんが」と前置きしたうえで、雑談としてサービスとおもてなしの違いを紹介しています。
サービスの語源はラテン語で「奴隷」のニュアンスが含まれていて、そこには主従関係があります。いっぽうおもてなしの語源はHospes、つまり病院(hospital)やホテル(hotel)と同義で、対等の意味が含まれています。
依頼するためには、“相手の労に対して尊敬の念を持って、自分ができることをやり尽くして依頼をするというスタンスが必要”だと言っています。
ま、ごもっともですね。どんなことをするにしても重要な心がけだと思いますが、意外とできない人いたりしませんか?
さまざまなフレームワーク
文書設計のどの段階においても、様々なバリエーションのフレームワークを紹介されています。
どんなフォーマットでその記述方法や手順などがとてもわかりやすく表といっしょに示されているのでわかりやすいです。
新書なので手軽に読めますし、冒頭ふれたように本書を読んだ後は時々必要箇所を読み返しながら『頭がよくなる「図解思考」の技術』と『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』をグラフ図表のリファレンス代わりに引きながら、ビジネス文書を作成してみてはいかがでしょうか。