日本の自動車産業って結局どうなんのよ?「トヨタ対VW(フォルクスワーゲン) 2020年の覇者をめざす最強企業」/中西孝樹(著)

2000年以降、トヨタが誇る「品質」「価値」の優位性が薄れ、リーマンショックが追い討ちとなって低迷する。そこへフォルクスワーゲングループの追い上げが迫る。
日米自動車メーカー各社の攻防がノンフィクション小説のように書かれていて、この手の本としては読みやすくてとても面白い。

個人的な疑問だけれど、ここ最近は円安から販売台数は伸びているけれど、もっと長い10年くらいのスパンで見たとき、日本の自動車産業は構造的な問題から、『売れたり売れなかったり』を繰り返すだけになるような気がします。仮にそこから脱するためには完全に製造コストを下げるため、製造拠点は海外に移していかなくてはならず、そんなに遠くない将来にはトヨタは海外の企業に・・・なんてことにはならないんですかね?
仮にそうならないとしても、海外依存度が高まればトヨタイズムは失われトヨタそのものが消え去るのでは?

この本を読むかぎり、トヨタの販売台数のグラフ上の波はいくつもの山を作っているのに対し、フォルクスワーゲングループはほぼ登り坂。
価値創造、ブランディング戦略にしてもフォルクスワーゲンはかなりな追い上げを見せている。
また、よく新興国戦略で期待をかけるけれどもインドのタタのように自国民に見合った自動車メーカーも出てくるわけで安穏としていられないはず。生産体制にしてもいくら日本のリーンを自慢しても、もはやどのメーカーも取り入れているわけですから。
特に日本国内にいたっては若年層の新車購買意欲が低下している上、人口減少で居住地域は年々都市部に集中するはずです。そうなれば益々国内需要は薄れます。
自動車産業の構造は日本全体の構造と併せて見て行く必要があるかと思いました。
つまり今後日本は自動車以外の世界に誇れる産業も推進していくべきだとおもいます。例えば再生可能エネルギーの分野などに。
安倍首相が述べた戦後レジームの枠に日本の発展に欠かせなかった自動車産業を含めて、その旧い時代からの脱却をそろそろ考えていくべきと感じます。

終盤『環境技術のデファクトを制するのは誰か』という節にあるようにエネルギー問題に対応できる車の開発が鍵となりそうだが、環境問題やどんなエネルギーが良いのかは割とトレンドに左右されがちで、予測は困難です。やはり販売台数だけで見るなら、いかに時流に答え得る製品を作るかがポイントになるのではないでしょうか。
いつも読んでくれてありがとね!